木材の変色と付き合う

木材はなぜ、変色するのか?

木材の変色は、木材中の成分が変化し、別の成分に変わるためです。木材に含まれる変色原因物質は種類が多く、微量でも変色するため、樹種によってその変化の様子は様々です。変色を発生させる外的要因は多くあり、複数の要素が働いたりするため、変色の要因を解明するのは非常に困難です。

変色=汚染と呼ばれたりもします。

HERMETICでは、一般的に「悪」とされている木材の変色と付き合っていくというスタンスで素材を研究しています。そこで、どういった変色の種類があるのかご紹介する為にも、このページを作成しました。

ここでは、そんな木材の変色のメカニズムに着目していきます。ここで紹介するもの意外にも変色の種類はありますが、代表的なもの6つをご紹介します。

①光

光には様々な波長があり、木材に影響を与えます。

特に紫外線の影響は強く、木材の成分の化学結合を切ってしまうほどの力があります。

木材の成分の中で、リグニンという成分とポリフェノール類をもつ抽出成分が紫外線をよく吸収します。

そこで化学反応が起こり、分解され、変性していく過程で木材の色も変化します。

色の変化は、樹種によって、色が濃くなっていくもの、薄くなっていくものなど様々です。

光の影響は甚大なのですが、その影響が及ぶ範囲は木の表面に限られます。激しく色が変化するのは表面から約0.3mm程度の深さまでといえるでしょう。表面を削ってしまえば、もとの色が現れてきます。それが他の材料とは異なる無垢の木材の強みです。

※塗料の影響も大きい

光による変色を助長するのが、オイルやウレタンなどによる塗装です。

・オイル塗装の場合、オイル自体が酸化重合という反応を起こし、濃色に変化するため、木材の色の変化との相乗効果で、より色が変化します。アンティーク家具に色が濃いものが多いのもそのためです。

・ウレタン塗装の場合、含有成分が紫外線の影響で黄色に変色しやすい傾向があります。

②雨水等による風化

 屋外で木材を使用すると雨の影響を受けて、灰褐色に変色します。

太陽光によって分解されたリグニンなどの変色物質は、水に溶けやすい性質を持っており、雨にさらされると溶出し、脱色されたようなグレー色になるのです。

リグニンや光化学反応により分解したポリフェノール成分は水に溶けやすい物質となるため、雨水などにより木材表面から溶出します。

溶出してしまうリグニンは、木材の骨格を形成しているセルロースを補強する役割を担っている部分です。

リグニンを失うと、木材の繊維は表面から剥がれ落ちていき、粗い状態になります。そして、内部まで紫外線が侵入することで、光劣化をさらに引き起こし、風化が進行していきます。

最終的には灰色化するとともに木材の繊維が切断され、細かい割れを伴いながら劣化していきます。

③金属による変色

金属製のものを木材の表面に置いておくと、黒色に変色する場合があります。

これは、鉄や銅といった金属イオンと木材中に含まれるタンニンが水分を介して反応し、黒色の化合物を生成するからです。タンニンが多い木材の場合には注意が必要です。

※タンニン・・・緑茶に多く含まれることで有名。

フェノール性の水酸基をもつ物質。

※タンニンが多い木材・・・杉、ナラ(オーク)など。

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④アルカリによる変色

アルカリ性の物質と接触すると灰褐〜暗褐色に変色する場合があります。これは木材中のタンニンがアルカリ性の物質と反応するのが原因です。

お酢などの酸性の物質で拭くと中和して元の色にもどります。

建築中の木材にモルタルやコンクリートが付着した場合やアルカリ成分が木材と反応して、変色します。

⑤酸化による変色

・熱・燃焼反応によるもの

木材に高熱が加わると熱分解を起こし、酸化反応が促進されて変色します。

木材は火炎にさらされても直ちに着火、燃焼することはありません。100℃までに水分が蒸発しらその後150℃くらいで材表面が褐色に変色します。

さらに、温度を上げていくと炭化します。

・酵素の働きによるもの

ポリフェノール酸化酵素が作用して、酸素とタンニンと結びつけて化学反応(酸化)されるためであると考えられます。生材を人工乾燥すると材の表面が褐色や黄色に変色することがありますが、この現象は、リンゴの皮を剥いてしばらくおいておくと茶色に変色するのと同じ原理です。

⑥微生物による変色

木材は糖類、でんぷん等の微生物が餌にすることができる成分から構成されているので、水分、温度、酸素の条件が揃えば、木材腐朽菌やカビ、変色菌が繁殖して生物汚染を生じます。

微生物自体の色や、菌の分泌物と木材成分との反応によるもので、青や赤などの色に変色する例が報告されています。

木材腐朽菌によるものは、茶褐色、灰褐色などに変色することがあります。

地質・埋没環境による変色神代木(じんだいぼく)の変色

神代木とは、火山灰や土砂崩れなどで地中深くに長期間埋もれていた天然木材のことを指します。樹齢に加えて、数百年〜数千年という埋没期間を経ており、掘り出された際には独特の色味を帯びているのが特徴です。

この変色は、地上の光・雨・酸化などの一般的な要因とは異なり、**地中という特殊な環境によって引き起こされる「化学的変質」**によるものです。

木材が酸素の少ない還元的な状態に長く置かれることで、内部のリグニンやタンニンなどの成分がゆっくりと変質していきます。とくに、地中に含まれる鉄分・硫黄分・ミネラル類などとの長期的な反応によって、灰褐色~黒色などの深みのある色合いへと変化していきます。

この変色は金属による反応と似た側面もありますが、神代木の場合は木材の表面に何かが触れた局所的な反応ではなく、地中全体の化学的環境によって木材の広い範囲が徐々に変化するのが大きな違いです。

また、光や微生物による変色がほとんど及ばない環境であるため、腐朽せずに保存されてきた木材の変色としては非常に珍しい部類に入ります。その希少性と美しさから、神代木は高級な建材や工芸品などに利用されることもあります。

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